音楽の話 #ニュー・シネマ・パラダイス

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音楽の話 #ニュー・シネマ・パラダイス

ニュー・シネマ・パラダイス

(1988)

エンニオ・モリコーネ

何をするにしても自分のする事を愛せ
  子供の頃、映写室を愛したように

 これは名作ニュー・シネマ・パラダイスの中で元映写技師のアルフレードが、子供のように可愛がってきた若き友人サルヴァトーレの旅立ちの時に贈った言葉。大人になるにつれ周囲の目や世間の意見に流されてしまいがちで、いつの間にか子どもの頃のように夢や希望を持つ事が出来ず、人生に疲れてしまう私たちの心に、強いメッセージを与えてくれますね。

 ニュー・シネマ・パラダイス、もうご覧になられましたか?舞台は第二次大戦終戦のあとの、まだ混沌とした空気が続いていたシチリア島僻地の小さな村。老年の映写技師と映画を愛する少年の友情と、その後の成長を描きます。村では日常生活で”外の世界”を知る機会はなく、教会で上映される映画だけが「文化」に触れる唯一のチャンスでした。アメリカ映画の中で描かれる想像を超えた豊かさや、保守的な村ではありえないロマンティックな男女関係など、村人たちは目を丸くして観ているのでした。現代の映画館ではなかなか見ることのなくなった光景――お腹を抱えて笑ったり、皆で歓声をあげたりブーイングを送ったり。一つ一つの映画をストレートに、ダイレクトに楽しみ、そして貪欲に次の映画を待ち望んだ、そんな時代があったのだな…と、追体験した夜でした。

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 おつかいのミルク代をチケットに使い映画を観ずにはいられなかった貧しきトト・サルヴァトーレも、二度の戦争に翻弄され教育を受けられず仕方なく映写技師の仕事に就いたアルフレードも、やはり映画に魅了された人。全篇に「映画の力を信じる」というテーマが貫かれ、いつの時代でも映画ファンの心を熱くしてくれる作品です。

 ニュー・シネマ・パラダイスはジュゼッペ・トルナトーレ監督のイタリア映画。音楽は最強のタッグを組んでいたエンニオ・モリコーネが担当しています。『マレーナ』や『海の上のピアニスト』なども有名ですね。日本でのお仕事は少ないですが、大河ドラマ『武蔵』の音楽を担当していました。七代目市川新之助(今の海老蔵さん)主演で配役もかなり豪華なキャストでしたが、まぁある意味では問題作の大河で…。僕も毎週観ていましたが、とにかく新之助さんの”眼力”が凄すぎて、それしか覚えていません。
モリコーネの音楽は、ご本人の希望とは裏腹に”世界一美しいメロディ”と評されます。ご本人的には現代音楽・純音楽が好みで、幾つかの作品では難解なスコアを取り入れていますが、そちらの方は尽(ことごと)く失敗しているようです。このニュー・シネマ・パラダイスでも、甘美で美しく叙情的でもある印象的なテーマを聴くことができます。映画を観ていない人でもこのテーマ曲は絶対に耳にしたことがあると思います。そして既に映画を観た人は、この曲を聴くたびに胸を焦がすことでしょう。

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 映画好き、音楽好きのマスターにとっては、原点を思い起こさせてくれる作品。若き日に抱いていた”世界に対するワクワクとドキドキ”を、本日よりまた生きる糧としたい所存です。

最後にアルフレードの言葉をもう一つ、贈ります。

友達は顔つきで選ぶ 敵は頭の良さで選ぶ

いや、実に深いです~

NO MUSIC, NO LIFE.

美味しいコーヒーと一緒に、音楽を楽しみましょう