音楽の話 #タイタニック ローズのテーマ

音楽の話 #タイタニック ローズのテーマ

タイタニック

「 ローズのテーマ 」

(1997)

シセル&ジェームズ・ホーナー

 

 さて後生に残る名作というものは数あれど、ことラブストーリーにおいてこれほどまでに人々の胸を打ち、永遠に脈動する映画は稀に見る傑作と言えようか。その名は『タイタニック』…1997年、ジェームズ・キャメロン監督・脚本で制作されたアメリカ映画で、世界的にロングランヒットしました。日本でもジブリ映画『もののけ姫』を抜いて歴代興行収入記録を更新したのだとか。マスターの知人は、公開当時から映画館に足繁く通い、毎回涙を流し、もちろんビデオも買い、テープが擦り切れるまで堪能し、観るたびに思いを募らせたと言います。彼女のタイタニック愛は小野市においてナンバー・ワンと申しても、きっと過言ではないでしょう。

 物語は1912年に起きた豪華客船タイタニック号の沈没事故をもとに、レオナルド・ディカプリオ演じる貧しい絵描きの青年ジャックとケイト・ウィンスレット演じる上流階級の娘ローズの悲恋を描いたラブロマンス大作。ラブストーリー部分はフィクションですが、登場人物やセット、船の出港から沈没に至るまで、史実を忠実に再現した点も見どころでありましょう。タイタニック号の沈没の原因に関しては真実がわかっておらず、様々な憶測が巡らされているわけですが、海洋の研究者はともかく、映画公開から20年以上を経ても人々の関心をやますことない当作品は、もはや映画という一つの括りを超越した存在なのかもしれません。

5758c156b28753381be9745d88e75830 (1)

 1912年といえば日本では明治45年、大正に移り変わる直前の明治最後の年でした。タイタニック号に日本人が一人だけ乗船していたのは有名な話ですね。鉄道院の留学生として赴いていたロシアから、知人のいるイギリスに寄りニューヨーク経由で帰国途中だった細野正文(まさぶみ)さん。孫の晴臣さんは『はっぴいえんど』や『イエロー・マジック・オーケストラ』で活躍し、時代の音楽を牽引し続けるミュージシャンであります。ジャンルの幅も広く、独特の音楽的センスは唯一無二、誰も真似できないでしょう。映画音楽を担当することも多く、最近では是枝裕和監督の『万引き家族』のOSTが記憶に新しいところ。マスターのお気に入りは、ゲイの老人ホームを描いた犬童一心監督の『メゾン・ド・ヒミコ』です。機会があれば、サウンドにも耳を傾けてみて下さい。話はお祖父様に戻りまして…正文さんは無事に救助され生還したのですが、様々な誤解から、帰国後は誹謗中傷を受け、鉄道院副参事の職も解かれ、68歳で亡くなるまで、そしてその後も長きに渡って辛い憂き目にあわされました。イギリス人生存者の証言から「他人を押しのけて救命ボートに乗り込んだ嫌な日本人」として汚名を着せられてしまうのですが、後に実はそれは別のアジア人のことだと判明します。その調査のきっかけになったのがなんと、この映画『タイタニック』だったのです。映画を制作するにあたって専門家による大規模な調査が行われ、新しく発見された資料からも正文さんの件は事実誤認であることがわかり、85年の時を経て名誉が挽回されたのでした。細野家では親戚一同が一堂に会してお祝いをしたのだとか…。

TB2nzF3aVXXXXXdXpXXXXXXXXXX_!!1623034756 (1)
 映画『タイタニック』の音楽は、アメリカ人作曲家ジェームズ・ホーナーと透明感溢れるクリスタルボイスが人気のノルウェー人ボーカリストのシセルによって作られました。当初ボーカルにはアイルランド歌手のエンヤをフューチャーしたようですが、コンサートツアーの都合で叶わなかったようです。もしもエンヤさんの声だったら…と思うと、ワクワクしますね。印象的な主題歌、世界の歌姫セリーヌ・ディオンが歌う『マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン』は、作中の”ローズのテーマ”をもとに作られました。元々は主題歌なしの予定で監督にも内緒でのレコーディングでしたが、デモテープを聴いた監督ジェームズ・キャメロンがセリーヌの声を物凄く物凄く気に入って見事に採用され、アカデミー歌曲賞、グラミー賞、ゴールデングローブ賞を総なめ、日本でもレコード大賞、ゴールドディスク大賞を受賞することになります。今ではセリーヌの代表曲の一つですね。

 最後に、この曲『ローズのテーマ』を聴くだけで反射的に涙を流していまう、マスターの知人によるローズ嬢へのラブレターを掲載して締め括りといたします。

*****

親愛なるローズ嬢サマ

私はタイタニックでローズ嬢サマと出会い、一度で貴女の虜に なりました。17歳という若さで一瞬一瞬の呼吸に強い意志と どこまでも深い誠実さ…言葉では言い尽くせない感動をいただきました。劇場に通い詰めた私を、貴女はいつも大きな愛で包み込んで下さいましたね。あの温もりを今もなお生きるチカラといたしております。 タイタニックが沈没するまでの4日間…ジャックさまとローズ譲サマは一生分の愛情を育まれたのではないでしょうか…ジャックさまが最後に言われた「君は、今日ここで死ぬのではなく、あたたかいベッドで…」その言葉通り貴女は日々を大切に、活発に101歳まで生き、女の子のお孫さまと楽しく生活を送られましたね。そのご様子からも心の中では、今日もローズらしく楽しく過ごしてね…というジャックさまの声と共に生きられたのではないでしょうか…。カルパチア号に助けられ身元の確認をされた際、本名のローズ・デヴィット・ブケイターではなく自然にジャックさまのお名前ドーソンと答えた時、ジャックさまへの深い深い愛を感じました。自由にたくさんの経験をして一生を終えようという強い意志を感じました。 ローズ嬢サマが自分自身の心にどこまでも正直に生きられた事、輝くような勇気をもらいました。人を想い、思いやる大切さを忘れずに私も貴女のように生きていこうと思います。貴女を、これからもずっとずっとお慕い申し上げます。

60566255 (1)

NO MUSIC, NO LIFE.

美味しいコーヒーと一緒に、音楽を楽しみましょう