音楽の話 #霧の浅瀬

音楽の話 #霧の浅瀬

霧の浅瀬 (1998) カール・ジェンキンス

 バブル崩壊から続いた平成不況、失われた20年。生活のスピードは加速し、犯罪の凶悪化と若年化は進む。誰もが疲弊していた世紀末。ミレニアムイヤー2000年、日本で一枚のCDが発売されました。ヒーリングミュージックブームの火付け役となった『image (イマージュ)』というコンピレーションアルバムを覚えているでしょうか。同年に先行して発売されていた『feel (フィール)』と共に大ヒットし、イージーリスニングのジャンルでは異例のミリオンセラーを記録しました。これを皮切りに幾多のシリーズが登場し市場は賑わいましたので、リラクゼーションアルバムに癒やしを求めた方も多いのではないでしょうか。この時分マスターは大学生をしており、通学の電車の中ではずっと聴いていました。それまでは一般リスナーには馴染みのなかったアーティスト(葉加瀬太郎や加古隆、ゴンチチ、羽毛田丈史、姫神、S.E.N.S、海外アーティストではサラ・ブライトマンやアンドレ・ギャニオン、マドレデウス、エニグマなど)を知る良いキッカケにもなったと思います。マスターもこの音楽から非常に影響を受け、自身の作る音楽にも多くのものが反映されました。

 カール・ジェンキンスはイギリス出身の作曲家。クラシックからジャズ、ロックまで幅広いジャンルの音楽に携わってきました。彼が50歳頃の1990年代からはニューエイジ・ミュージックに活動の場を移します。ソロ・プロジェクト『アディエマス』という名前の方がメジャーかもしれません。霧の浅瀬は、月をテーマにサウンドコンポーズされた『幻想の海』という作品集の9曲目(全14曲)で、アディエマスでお馴染みのシンセサウンドと、パメラ・ソービーのリコーダー、3オクターブ半の音域を誇る女性ボーカル(ミカエラ・ハスラム、サラ・エイデン、ヘザー・ケアンクロス)の優しい響きが印象的。非常に透明感のある音楽でありながら、どこか温かくココロの中心部に真っ直ぐ浸透してくる…3分間、あたまを空っぽにして奇麗なオトにカラダを浸してあげるのも、時には良いものです。

Palus Nebularum

 ※霧の浅瀬:月には場所ごとに名前が付いていて、「コーカサス山脈」のふもと、「雨の海」から連なるところに「霧の浅瀬」があるそうです。

 

NO MUSIC, NO LIFE.

美味しいコーヒーと一緒に、音楽を楽しみましょう