音楽の話 #虹の彼方に

音楽の話 #虹の彼方に

虹の彼方に(1939) Yip Harburg & Harold Arlen

 今回ご紹介する曲はアメリカのファンタジーミュージカル映画「オズの魔法使」から、劇中歌「虹の彼方に(Over the Rainbow)」。歌手で女優のジュディ・ガーランドが17歳の時に、ドロシー役で歌いました。この映画は日本ではあまりメジャーではないので、観たことがない人も多いと思いますが、きっとメロディーはご存知のはずです。ストーリーは、児童文学作家のライマン・フランク・ボームが1900年に発表した原作の通りに進みます。

《エムおばさん、ヘンリーおじさん、そして下働きのハンク・ヒッコリー・ジークとともにカンザスの農場に住む少女ドロシー・ゲイルは虹の彼方のどこかによりよい場所があると夢見ている。彼女は竜巻に襲われて気を失った後、愛犬のトトや自分の家とともに魔法の国オズへ運ばれてしまう。そこで出会った北の良い魔女は「黄色のレンガ道をたどってエメラルド・シティに行き、オズの魔法使いに会えば、カンザスへ戻してくれるだろう」とドロシーに助言してくれた。旅の途中で彼女は(知恵が欲しい)知恵がない案山子、(心が欲しい)心を持たないブリキ男、(勇気が欲しい)臆病なライオンと出会い、ドロシーや彼らの思いを胸に、彼らと絆を深めながら旅をともにする。家へ帰る方法は「家が一番いい」と願うことであった。~Wikipediaから引用》

 この作品も当時アメリカで流行していた豪華絢爛なミュージカル映画の一つで、莫大な制作費が費やされたため、大ヒットしたにもかかわらず興行収入が制作費を上回るに至らなかったそうです。興行的には失敗かと思われますが、やはり観客や評論家たちには好評で、アカデミー賞では作曲賞、歌曲賞を受賞しました。
 そんな「虹の彼方に」を歌った清純で明るく健康そうなイメージのジュディですが、その人生は波乱万丈でした。デビュー当時から会社の指示で薬物を常用し、次第に摂取量も増え、神経症と薬物中毒に苦しみ、ついには精神異常を来し女優業も終焉を迎えます。性生活に関して非常に自由奔放であった彼女。結婚は5回経験し、二人目の夫との子供には映画や舞台で活躍中の女優ライザ・ミネリがいます。当時の社会では珍しく同性愛にも寛容で、彼女自身もまたバイセクシャルでした。その事はファンやゲイコミュニティでは有名で、現在LGBTの象徴旗として使われているレインボー・フラッグは、この曲「虹の彼方に」に着想を得て作られました。また同性愛解放運動では必ずOver the Rainbowがかかるそうです。晩年はますます薬物中毒、アルコール依存症、荒淫が激しさを極め、最期は睡眠薬の過剰摂取による自殺でこの世を去りました。47歳の若さでしたが、その体は老人のようにボロボロだったようです。
 このように破滅的な人生を歩んだジュディでしたが、女優として以外に歌手としても評価されていました。ジャズ歌手として活動し、カーネギーホールでもソロコンサートを行っています。「虹の彼方に」は彼女のテーマソングとも言える曲になり、生涯の持ち歌として大切に歌っていたそうです。2001年にアメリカで選定された「20世紀の名曲」では第1位に選ばれました。今ではスタンダードナンバーとして多くのアーティストによって歌われています。マスターのオススメは、太り過ぎが原因で38歳でこの世を去った340kgのハワイアンシンガー:イズラエル・カマカヴィヴォオレが歌ったヴァージョンです。びっくりするくらい美しい歌声です。

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『虹の彼方に』

どこか、虹の向こうの空高くに
昔、子守唄で聞いた国があるはず

どこか、虹の向こうに空がとても青く
信じてた夢がすべて叶う場所がある

あたしはいつか星に願うでしょう
そして目覚めると雲ははるかかなたに消えて晴れわたり
悩みはレモンドロップのようにとけてなくなる
煙突よりもずっと上のほうで、あなたはあたしを見つけるわ

どこか、虹の向こうに青い鳥が飛ぶ場所がある
鳥達が虹を超えていけるのに、どうしてあたしにできないの?
もし、幸せな小鳥達がその虹を超えて行けるなら、
あたしにもきっとできるはずよ

NO MUSIC, NO LIFE.

美味しいコーヒーと一緒に、音楽を楽しみましょう